山吹りりん

自作乙女ゲーム関連の作品をあげていく予定です。

投稿日:2021年07月09日 22:03    文字数:3,507

【トリッキーツインズ】死が訪れた後も永遠に

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「トリッキーツインズ」、アンリと双子の出会いエピソードがあります。双子が回想する感じで、現在のアンリは出てこないです。
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「あーんもう、やっぱりないや……」

秘蔵の写し絵を保存している箱を漁っていたティアは残念そうにため息をつく。

「……なに探してるの?」

ティアの様子が気になったティースが、箱の中を覗き込む。
そこにはいつも通り、彼らの大好きなご主人様の写し絵が大量にある。

「あっ、ティース!ご主人様の昔の写し絵って持ってない!?」
「昔の……?なんで…?」
「よく考えたらご主人様がまだ小さかった時のって一枚も持ってなくってさ~!あ~!もったいないことした!って思って。」
「え……ティアってご主人様が小さい頃から欲情してたの……?ドン引き……」
「いやいや違うよ!?してないから持ってないんじゃん!?あの頃は別に、そういう対象として見てなかったし!」

ティアとティースは、こう見えてかなり永い時を生きる悪魔だった。
今の主人であるアンリと契約したのはもう十年以上前。彼女がまだ幼さの残る少女だった頃だ。

「なんで今更小さい頃の写し絵なんて欲しいの……?」
「だってご主人様のことはぜーんぶ残して味わっておきたいじゃん?あの頃はそんなこと考えてなかったから仕方ないけどさー、あーもったいない!」
「へー……。」
「え、何その反応!?興味無さそうな顔して……ティースだってさ、もし今のご主人様がある日突然小さくなっちゃいました!ってなったらどうするんだよ?可愛くない?欲情しない?」
「………する。」
「ほら~!」

二人の悪魔は弱い存在には興味がなかった。
契約した当初のアンリはまだ幼く、潜在的な魔力量はあったが実力としてはまだ二人を完全に従えるほどではなかった。
その頃から契約はしていたが、そこまでの興味を持ってはいなかったのだ。

「悪いけど……僕も、ご主人様の昔の写し絵は持ってないよ……」
「はぁ~……だよね。うーん、じゃあなんか魔法でご主人様を小さくしたりしてみる?」
「そっちの方が面白そう……。今思えば、ご主人様可愛かったよね……。」
「可愛かった~!今のご主人様がもちろん大好きだけど、もう一度見てみたいよね~」
「ご主人様と初めて会った時は……こんな風になるなんて、思ってもみなかったのに。」
「あ~、そうだね。あんなか弱いオチビちゃんだったのに。」

話をしながら、二人はアンリと出会った頃の記憶を思い出す。

--------------

召喚された二人の悪魔が最初に見たのは、小さな少女だった。
小さいのに、立ち居振る舞いや顔つきがとても堂々としていたのが印象的だった。

「あんたたち、私の使い魔になりなさい。」

まだ幼い少女にそんなことを言われて、大人しく従うような悪魔たちではなかった。

「あはは、聞いた~?ティース。使い魔になりなさいだって。」
「うん……馬鹿じゃないの……?」
「まだ小さい子供にそんなはっきりバカなんて言ったら可哀そうじゃん。オチビちゃん、ちゃんと身の丈に合った召喚をしなさいって習わなかったのー?」

アンリは悪魔たちに完全に舐められていた。だが、物怖じした態度は少しも見せない。

「ここで契約しないと後悔することになるわよ。」

はっきりとそう言い切った少女に二人は興味を持った。
そして、気づいた。まだ幼く今は二人にとってはか弱い魔力だけれど、魂の輝きがとても力強い。
使い魔としての契約は様々な方法があるが、何にしても使い魔へ捧げる対価が必要だ。

「へぇ~、すごい。魂がギッラギラ!あれ食べたら絶品だろうなぁ~!」
「うん……あんなにすごいのは、見たことないかも……。」

この子供はもしかして自覚しているのだろうか。
自分の魂の輝きが、悪魔にとって魅力的でたまらないということを。
それを餌に契約しようとしているのか。面白い。

「うん、契約してもいいよ!その代わり……」
「君が死んだら……君の魂は僕たちの物だから……」

魂を捧げるだなんて、普通なら恐ろしいと思うことのはずなのに、少女はまったく動じた様子もなく。

「いいわよ。」
「随分簡単に言うけど、意味分かってる?悪魔に囚われた魂は輪廻の輪から外れて、もう転生できなくなるよ?」
「それくらい知ってるわよ。馬鹿にしないで。」
「じゃあ……なんでそんなに平気そうなの…?怖くないの…?」
「死んだ後のことなんてどうでもいい。好きにすればいいわ。私は今生きてる間に使えるモノが欲しいだけ。」

悪魔のことを物扱いするなんて、命知らずだ。
まだ契約もしていないうちに機嫌を損ねて殺されるかもしれないのに。

「あはは、傲慢なオチビちゃんだなあ。納得してるならいいよ。でも……俺たちを完璧に従えようなんて思わないでよね?」
「そうだね……魂の輝きは強くても、まだまだ弱い……すぐにひねりつぶせそう。」
「そんな心配しなくても、すぐに従えるようになるわよ。」

まだ幼さの残るアンリは、そう言って不敵に笑った。

---------------------

あの時、アンリの言った言葉は現実となった。
アンリは成長するにつれ、どんどん魔力も強くなり、悪魔たちを従える実力をつけた。
幼い頃から変わらない、ある意味でものすごく真っすぐなあの性格のまま、美しく成長する様を一番近くで見てきた悪魔たちは、アンリに惹かれていったのだった。

「あ~~んもう、もったいない!あの時の俺!なんでご主人様の魅力に気づかないかなー!ほんとバカ!!バカ!」
「でも仕方ないんじゃないかな……弱いものには興味わかないし……ご主人様が強くなったからこそだよ。」
「それはそうなんだけどさ~!」

ティアは持っている中で一番若いアンリの写し絵を手にしてため息をつく。
この頃、まだ少女の面影は残しているが、手に入るならもう少し小さい頃の姿を堪能したかった。

「あ、そういえばティース覚えてる?」
「……何を?」
「俺とティースが初めてご主人様にお願いした時の顔!」
「お願いって……ああ、あれのこと……。」

ティアの言葉に思い当たることがあったのか、ティースが笑みを浮かべる。
まだ実力が足りておらず悪魔たちに弱いと思われていた頃のアンリには、性的興奮は覚えなかった。
でも、どんどん強くなって、それでも昔からぶれない強気な性格が魅力的に映った。

彼女にたくさん罵られ痛めつけられいじめられたい……
彼女を閉じ込めて縛って痛みを与えて可愛がりたい……

そんな欲求を持つようになってから、初めて面と向かってそれを言った時のことだ。
予想していたことだが、アンリは思いっきり引いていた。

「は~~、あの汚いモノを見るような目がたまらなかったよね!またあんな目で見られたい~~」
「そうそう。……初めてだからこその戸惑いもあって、すごく可愛かったしね……」
「うんうん!今もよくドン引きされるけど、あの時ほどなにこいつ気持ち悪っ!っていう感情が伝わってくる表情って二度とないもんね~!」
「まあ、慣れもあるよね……そろそろレベルアップしていかないと……」
「なるほど!引かなくなったら面白くないもんね!えへへ、今度は何をお願いしようかな~」

自分たちの欲望を叶えてもらいたい気持ちも当然あるが、
それ以上に二人はアンリのことが好きで、構ってもらうのが好きだった。
それにアンリはぶつぶつ文句を言いながらも二人に付き合ってくれることが多い。
引き際さえ見誤らなければ、それなりに遊んでくれる。本人に遊んでいるつもりはないかもしれないが。

「最初は、ご主人様の魂が美味しそうだから契約したんだけど、今はなるべく長生きして欲しいなぁ~」
「うん……そうだね。もっといっぱい……生きているご主人様と、一緒にいたいね……。」

悪魔の自分たちがこんなことを考えるなんて思ってもみなかった。
あんなに極上の魂を目の前にして、もっと長生きして欲しいなんて。
死ななければあの魂は手に入らないのに。

「ご主人様がもし死んだら……魂、どうする……?」
「へ?う~ん。食べたい、けど……食べて終わりにするのももったいないよね。かと言って転生させるのも嫌だから、俺たちで永遠に独占するって言うのは?」
「ふふ……それ、いいね。食べるより、楽しそう。死んでもたくさん……可愛がってあげられるね。」
「うんうん!実体がないのは寂しいけど、霊体のままでも楽しめることは色々あるよね!」

アンリの知らないところでこんな会話が進められる。
アンリの魂は、死んだ後も永遠に双子の悪魔たちに囚われ続けることが決まったのだった――。
 
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秘蔵の写し絵を保存している箱を漁っていたティアは残念そうにため息をつく。

「……なに探してるの?」

ティアの様子が気になったティースが、箱の中を覗き込む。
そこにはいつも通り、彼らの大好きなご主人様の写し絵が大量にある。

「あっ、ティース!ご主人様の昔の写し絵って持ってない!?」
「昔の……?なんで…?」
「よく考えたらご主人様がまだ小さかった時のって一枚も持ってなくってさ~!あ~!もったいないことした!って思って。」
「え……ティアってご主人様が小さい頃から欲情してたの……?ドン引き……」
「いやいや違うよ!?してないから持ってないんじゃん!?あの頃は別に、そういう対象として見てなかったし!」

ティアとティースは、こう見えてかなり永い時を生きる悪魔だった。
今の主人であるアンリと契約したのはもう十年以上前。彼女がまだ幼さの残る少女だった頃だ。

「なんで今更小さい頃の写し絵なんて欲しいの……?」
「だってご主人様のことはぜーんぶ残して味わっておきたいじゃん?あの頃はそんなこと考えてなかったから仕方ないけどさー、あーもったいない!」
「へー……。」
「え、何その反応!?興味無さそうな顔して……ティースだってさ、もし今のご主人様がある日突然小さくなっちゃいました!ってなったらどうするんだよ?可愛くない?欲情しない?」
「………する。」
「ほら~!」

二人の悪魔は弱い存在には興味がなかった。
契約した当初のアンリはまだ幼く、潜在的な魔力量はあったが実力としてはまだ二人を完全に従えるほどではなかった。
その頃から契約はしていたが、そこまでの興味を持ってはいなかったのだ。

「悪いけど……僕も、ご主人様の昔の写し絵は持ってないよ……」
「はぁ~……だよね。うーん、じゃあなんか魔法でご主人様を小さくしたりしてみる?」
「そっちの方が面白そう……。今思えば、ご主人様可愛かったよね……。」
「可愛かった~!今のご主人様がもちろん大好きだけど、もう一度見てみたいよね~」
「ご主人様と初めて会った時は……こんな風になるなんて、思ってもみなかったのに。」
「あ~、そうだね。あんなか弱いオチビちゃんだったのに。」

話をしながら、二人はアンリと出会った頃の記憶を思い出す。

--------------

召喚された二人の悪魔が最初に見たのは、小さな少女だった。
小さいのに、立ち居振る舞いや顔つきがとても堂々としていたのが印象的だった。

「あんたたち、私の使い魔になりなさい。」

まだ幼い少女にそんなことを言われて、大人しく従うような悪魔たちではなかった。

「あはは、聞いた~?ティース。使い魔になりなさいだって。」
「うん……馬鹿じゃないの……?」
「まだ小さい子供にそんなはっきりバカなんて言ったら可哀そうじゃん。オチビちゃん、ちゃんと身の丈に合った召喚をしなさいって習わなかったのー?」

アンリは悪魔たちに完全に舐められていた。だが、物怖じした態度は少しも見せない。

「ここで契約しないと後悔することになるわよ。」

はっきりとそう言い切った少女に二人は興味を持った。
そして、気づいた。まだ幼く今は二人にとってはか弱い魔力だけれど、魂の輝きがとても力強い。
使い魔としての契約は様々な方法があるが、何にしても使い魔へ捧げる対価が必要だ。

「へぇ~、すごい。魂がギッラギラ!あれ食べたら絶品だろうなぁ~!」
「うん……あんなにすごいのは、見たことないかも……。」

この子供はもしかして自覚しているのだろうか。
自分の魂の輝きが、悪魔にとって魅力的でたまらないということを。
それを餌に契約しようとしているのか。面白い。

「うん、契約してもいいよ!その代わり……」
「君が死んだら……君の魂は僕たちの物だから……」

魂を捧げるだなんて、普通なら恐ろしいと思うことのはずなのに、少女はまったく動じた様子もなく。

「いいわよ。」
「随分簡単に言うけど、意味分かってる?悪魔に囚われた魂は輪廻の輪から外れて、もう転生できなくなるよ?」
「それくらい知ってるわよ。馬鹿にしないで。」
「じゃあ……なんでそんなに平気そうなの…?怖くないの…?」
「死んだ後のことなんてどうでもいい。好きにすればいいわ。私は今生きてる間に使えるモノが欲しいだけ。」

悪魔のことを物扱いするなんて、命知らずだ。
まだ契約もしていないうちに機嫌を損ねて殺されるかもしれないのに。

「あはは、傲慢なオチビちゃんだなあ。納得してるならいいよ。でも……俺たちを完璧に従えようなんて思わないでよね?」
「そうだね……魂の輝きは強くても、まだまだ弱い……すぐにひねりつぶせそう。」
「そんな心配しなくても、すぐに従えるようになるわよ。」

まだ幼さの残るアンリは、そう言って不敵に笑った。

---------------------

あの時、アンリの言った言葉は現実となった。
アンリは成長するにつれ、どんどん魔力も強くなり、悪魔たちを従える実力をつけた。
幼い頃から変わらない、ある意味でものすごく真っすぐなあの性格のまま、美しく成長する様を一番近くで見てきた悪魔たちは、アンリに惹かれていったのだった。

「あ~~んもう、もったいない!あの時の俺!なんでご主人様の魅力に気づかないかなー!ほんとバカ!!バカ!」
「でも仕方ないんじゃないかな……弱いものには興味わかないし……ご主人様が強くなったからこそだよ。」
「それはそうなんだけどさ~!」

ティアは持っている中で一番若いアンリの写し絵を手にしてため息をつく。
この頃、まだ少女の面影は残しているが、手に入るならもう少し小さい頃の姿を堪能したかった。

「あ、そういえばティース覚えてる?」
「……何を?」
「俺とティースが初めてご主人様にお願いした時の顔!」
「お願いって……ああ、あれのこと……。」

ティアの言葉に思い当たることがあったのか、ティースが笑みを浮かべる。
まだ実力が足りておらず悪魔たちに弱いと思われていた頃のアンリには、性的興奮は覚えなかった。
でも、どんどん強くなって、それでも昔からぶれない強気な性格が魅力的に映った。

彼女にたくさん罵られ痛めつけられいじめられたい……
彼女を閉じ込めて縛って痛みを与えて可愛がりたい……

そんな欲求を持つようになってから、初めて面と向かってそれを言った時のことだ。
予想していたことだが、アンリは思いっきり引いていた。

「は~~、あの汚いモノを見るような目がたまらなかったよね!またあんな目で見られたい~~」
「そうそう。……初めてだからこその戸惑いもあって、すごく可愛かったしね……」
「うんうん!今もよくドン引きされるけど、あの時ほどなにこいつ気持ち悪っ!っていう感情が伝わってくる表情って二度とないもんね~!」
「まあ、慣れもあるよね……そろそろレベルアップしていかないと……」
「なるほど!引かなくなったら面白くないもんね!えへへ、今度は何をお願いしようかな~」

自分たちの欲望を叶えてもらいたい気持ちも当然あるが、
それ以上に二人はアンリのことが好きで、構ってもらうのが好きだった。
それにアンリはぶつぶつ文句を言いながらも二人に付き合ってくれることが多い。
引き際さえ見誤らなければ、それなりに遊んでくれる。本人に遊んでいるつもりはないかもしれないが。

「最初は、ご主人様の魂が美味しそうだから契約したんだけど、今はなるべく長生きして欲しいなぁ~」
「うん……そうだね。もっといっぱい……生きているご主人様と、一緒にいたいね……。」

悪魔の自分たちがこんなことを考えるなんて思ってもみなかった。
あんなに極上の魂を目の前にして、もっと長生きして欲しいなんて。
死ななければあの魂は手に入らないのに。

「ご主人様がもし死んだら……魂、どうする……?」
「へ?う~ん。食べたい、けど……食べて終わりにするのももったいないよね。かと言って転生させるのも嫌だから、俺たちで永遠に独占するって言うのは?」
「ふふ……それ、いいね。食べるより、楽しそう。死んでもたくさん……可愛がってあげられるね。」
「うんうん!実体がないのは寂しいけど、霊体のままでも楽しめることは色々あるよね!」

アンリの知らないところでこんな会話が進められる。
アンリの魂は、死んだ後も永遠に双子の悪魔たちに囚われ続けることが決まったのだった――。
 
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