カップリング、夢小説ともに読み書きします。サイトに載せたものを再掲載したりしています。恋愛度薄めが好きです。

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投稿日:2019年06月13日 17:17    文字数:2,189

声がする

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スカルミリョーネ視点。※死ネタ注意。詳しい描写はありませんが、夢主が隻腕なのでそれも注意。

夢小説作品

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登場人物1

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声がする
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 命が尊いなどとは人間だけの幻想だ。やつらにとってそれが儚いものであるから殊更にありがたがっているだけだ。
 闇に向かってほんの僅かにでも手を伸ばせば、容易く永遠の命が手に入るというのに。モンスターにとって生も死も大した意味を持たなかった。
 肉体は土に還り魂は空に溶け、やがて存在すらも忘れ去られる。まったく人間とは脆弱なものだな。
 やはり我らアンデッドこそが人間を駆逐し地上を席巻すべき種族なのだ。


 少し前のこと、私の傍らに一人の女が倒れ伏していた。土のクリスタルの様子を見るためトロイアを探りに行った時、街から外れた森の中で死にかけているのを見つけたのだ。
 女には右腕がなかった。モンスターとの戦いで利き腕をなくし、美貌が損なわれたので、美と強さを重んじるトロイアを追放されたようだった。そうして女は今にも野垂れ死のうとしていた。
 もちろん私はその女を助けはしなかった。ただ女が死んだあと、恨みや未練があるならばアンデッドとして復活させ、部下に加えようと死ぬのを待っていたに過ぎない。
 しかし女は……後にルルススと名乗ったその女は、死ななかった。類い稀なる生命力で生き延びたのだ。
 そして愚かにも私が彼女を心配して見守っていたのだと勘違いをし、以来どうあしらおうとしても私の後をついてくるようになってしまった。


 片腕であることにも次第に慣れたルルススは、群れからはぐれそうになるゾンビーを器用に誘導して私のもとへ連れて戻る。
 その様はまるで人間どもが飼う牧羊犬のようだった。私はそんなものを飼いたいとは思わない。
 騒々しくゾンビーたちに指示を出すルルススを憂鬱な気分で見やる。もう少し静かに過ごせないのか、あいつは。
 声が頭蓋に響いて……痛みなど感じないはずの死した肉体なのに頭痛がしそうだ。

 いい加減ルルススの騒がしさに嫌気がさしたところで尋ねてみる。
「貴様はなぜ私についてくる。アンデッドになりたいのか?」
 代償に死を捧げ、永遠を望むのならば考えてやらんでもない。死ねば多少こやつも静かになるだろう。
 しかし、ルルススは私の問いかけに返事をせず関係のないことを言って話を逸らした。
「名前で呼んでよ、スカルミリョーネ」
「何のために」
「呼んでほしいから!」
 なぜ私につきまとうのか。その理由がはっきりしない限り、この女は延々と私を煩わせ、その喧しい声を聞かせ続けるのだろう。
 仕方がない。他に方法がないからそうするだけだ。決して呼びたくて呼ぶわけではない。
「……ルルスス。なぜ私についてくる?」

 やっとの思いでその名を口にした私に対してルルススの答えは人間と思えぬ非道だった。
「うーん。特に理由はない! ついて行きたいからスカルミリョーネが嫌がってもそうしてるだけだよ!」
「……」
 なんたることだ。ならば私はどうやってこの騒々しい人間をそばから追い払ったらいいのだ?
 人間とは他者を思いやるものだと考えていた。愚かしいことだと見下していたが、今はルルススに対してその思いやりとやらを持ってほしいと切に願う。
 私は死に等しいほどの静寂が好きなのだ。

 頭を抱える私を面白そうに見つめながらルルススは続けた。
「強いて言うなら、スカルミリョーネのことが好きだからかなあ。暗いし無口だし、話してて楽しいわけでもないのに不思議だよね。でも私、明るくて輝かしいものになんだか疲れちゃったからさ」
 私のような根暗なもののそばにいると落ち着くのだと、ちっとも落ち着かぬ大きな声で笑いながらそう言った。
 トロイアは美と強さを重んじる国。こやつが片腕を失ってから国を追放されるまでに様々なことがあったのだろう。だが人間にとっての“様々”など我らアンデッドにはごく一瞬の出来事でしかない。
 今ここにいるのは己の弱さと醜さを自覚し、受け入れたルルススなのだ。


 命が尊いなどとは人間だけの幻想だ。
 やつらにとっては死こそが永遠。突如として目の前に突きつけられた運命に抗うことさえできぬ脆弱な者ども。
 人間は、死ねば終わりなのだった。


 あれからどの程度の月日が経過したものか、覚えていない。ルルススの死骸を前に私は立ち尽くしていた。
 アンデッドとして甦らせることもできる。始めはそのつもりだった。どうせ使い捨てのゾンビーだ。片腕がなかろうと両腕が揃っていようと大した違いはない。
 我が部下となるならばルルススを受け入れる準備はできていた。しかし今、私はただ、彼女の死骸を見下ろして立ち尽くしている。
 甦らせたところでそれはルルススではない。意思を持たぬ、ただの生ける屍だ。
 私は何日もそこに立っていた。ルルススが腐り、骨となり、土に還るまで。
 もはやアンデッドとなることも叶わなくなるまで。

『スカルミリョーネのことが好きだから』
「ああ、うるさい」
『一緒にいると落ち着くの』
「うるさい!!」

 肉体を失ってなお悩ませるあの喧しさ。私の脳裏にはルルススの声が焼きついていた。決して消えることなく響き続けている。
 人間は容易に命を失う。何かの拍子に物を取り落とすかのごとく、簡単に。だが思わぬところで永遠を手にすることもある。
 私はあいつの声を忘れられないだろう。永遠に忘れられないだろう。
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