もにゃ

まったりと書いていきます。
R18、男装ものなどが多いかも。

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Caligula-カリギュラ-(鍵主鍵、主鍵主中心)

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投稿日:2017年02月12日 23:16    文字数:7,334

うわきはいけません

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鍵介×主人公。主人公=日暮白夜(本名・日暮眞白)。
自宅主人公設定注意、現実世界で女性の設定です。
詳しくはこちら→http://5w1h.minibird.jp/2016/10/04/caligula-byakuya/
ED後、同棲している設定です。
1 / 1
 恋も愛も理性でするものではないのだから、理性がとんだら止まらないのは道理である。

 泊まりがけの用事が出来た。珍しいことではないが、こういう事情で家を空けることはたまにある。
 「気を付けて」
 そんなことがあるたび、白夜はやや心配そうに、けれど気丈に振る舞いながら、鍵介笑って見送ってくれる。その本心は「ついていきたい」なのか「寂しい」なのか。聞いてしまうと離れがたいので、いつも聞けずにいる。
 「わかってる。そっちも、火の元とか気を付けて。……じゃあ、いってきます」
 「うん。いってらっしゃい」
 後ろ髪を引かれるような思いをしながら肩越しに見た白夜は、こらえてはいるのだろうがやはり寂しげで、少しだけ胸が痛んだ。
 中学、高校と軟禁生活を送っていた影響で、白夜は交友関係が異常に狭い。もちろん、家を出て一人暮らしをはじめ、こうやって鍵介と暮らしてからは、少しずつそれも改善しようとしてはいる。
 しかし、交友関係なんて一朝一夕に広がるものでもない。結果、こうやって鍵介だけが外出する用事が出来る、ということも起こってしまうのだった。
 白夜は、「鍵介が悪いわけじゃないでしょ」と気にしていない素振りだが、やはり寂しいのだろう、とは思う。何か埋め合わせしよう、といつも思うのが常だった。

 そして、今回の用事を終えてようやく帰ってきた。
 「ただいま」
 一日ぶりの家の中はしんとしていて、その声にも反応は帰って来ない。出かけたのかとも思ったが、玄関の鍵は開いていた。
 「眞白?」
 不安半分、不思議半分で家に入ると、寝室のドアが開いている。そのままドアを開けて中に入ると、布団にはちょうど一人分くらいの膨らみがあった。そして、よく見ると規則正しく上下している。
 ……どうやら、鍵介の帰りを待っている最中に眠ってしまったらしい。一瞬、また親類から嫌がらせを受けたり、何かに巻き込まれたりしたのでは、とひやりとしたが、ほっと胸をなでおろす。
 しかしもう時刻は夕方だ。夕飯の支度もあるし、起こそうと思い布団をめくってみた。
 すると、そこには衝撃的な光景が広がっていたのである。
 「…………………!」
 鍵介と白夜、二人分の布団をぴったりと合わせたそのど真ん中に、白夜は幸せそうな寝顔で眠っていた。下着姿に、鍵介の白いセーターだけを着て。
 「……なんだこれ……」
 思わず声に出してしまった。自問したところで答えなどわかるはずもないのだが。
 白いセーターから覗く真っ白な手足と、布団の温もりにうっすらピンクに色づいた肌が、なんともあだめいていて。何度見ても、たぶん下着しかつけていない。
 鍵介は男性にしては小柄な方だが、眞白は女性の中でも更に小柄なので、ぎりぎり危ういところが見えていない状態だ。そんな姿で、子供のようにきゅっと身を縮めて寝息を立てている。
 「…………? ん…………」
 さすがに布団をはがされっぱなしで寒かったのか、それとも鍵介の声に起こされたのか、白夜が小さく声を上げて目を開いた。
 「けんすけ……?」
 白夜の寝ぼけ眼がゆっくりと焦点を合わせ、鍵介を捉える。そして辺りを見渡し、しばらくそのままだった。今、まだ寝起きの頭で自分の状況を思い出しているのだろう。
 「…………! えっ、あ、あの! ち、違う! これは違う! 」
 そして一気に覚醒したらしく、顔を真っ赤にしてセーターを押さえ始めた。ぐいぐいと下に向かって伸ばされていくセーターを見つめながら「ああ、あれ気に入ってたけど買い替えかなあ」なんて考えている鍵介は、まだ現実が遠い。
 というか、何が「違う」のだろう。その反応はまるで浮気が見つかったみたいじゃないか。僕は誰と浮気されたんだろう。自分のセーターか?
 「何が違うんですか『先輩』」
 そんな現実逃避をしている間に少しずつ面白くなってきて、自然とからかうために昔の口調に戻った。白夜はそんなことも気付かないほど慌てふためいている。
 「ええと、だから、その、これは……あの、ごめんなさい」
 言い訳を探したのだろうが、結局思いつかなかったらしい。俯いて素直に謝った。
 それがなんだか可愛くて、思わず吹き出してしまう。許してやりたいが、ちょっと意地悪してしまいたくなる気持ちもある。布団に座り込んだ白夜に視線を合わせるように、鍵介も荷物を置いて布団に座った。
 「いきなりごめんなさい、じゃわかんないですよ。ちゃんと説明してくれます? 何がどうしてこうなったのか」
 「そ、の……その、さ、寂しくて……つい、その……」
 「なるほど。先輩は寂しいから、僕のセーターを勝手に着て、そんな恰好で寝てたと」
 繰り返してやると、白夜は本当に絵に描いたように真っ赤になって更に俯いてしまった。小さくもう一度「ごめんなさい」と繰り返したのが聴こえる。
 「そうですね、浮気はいけません」
 「う、うわき……? えっ」
 鍵介がそういうと、「浮気」の文字に思考停止したのか、白夜は真っ赤なまま目を丸くした。その隙に肩を押してやると、面白いくらい簡単に押し倒せてしまう。とさり、と軽い音を立て小柄な身体が布団に倒れ、黒髪が広がった。
 上から見下ろすと改めて思うが、扇情的な光景だ。自分の下着姿に自分のセーターを着ただけの恋人が押し倒されている、というのは。
 「とにかく。今回は先輩が悪いんですからね。そこんとこ覚えておいてください」
 いいですね、と念押ししてから眼鏡を外し、その桜色に色づいた肌と唇を味わい始めた。
 体重をかけ過ぎないように気を付けながら、口付けを落とし、少しずつ角度を変えて口内を犯す。柔らかな唇に吸い付き、舌を割り入れて、敏感な部分をそうっと刺激していった。上顎、舌裏、舌先にゆっくりと優しい愛撫を繰り返す。
 「ん、ぅ……」
 ときどき、「ちゅ」と音を立ててみせると、気持ちよさそうに声を漏らし、眉を寄せるのが可愛らしい。
 白夜の華奢な身体はすっぽりと鍵介の身体の内側に入っていて、逃げようにも逃げられない。そもそも、白夜は逃げようとなどしないのだが。その事実が、鍵介の中の独占欲と嗜虐心を、やわやわと刺激する。この子は自分のもので、自分がこんなことをしても、喜んで受け入れるくらい自分に溺れているのだ、という実感がたまらない。
 白夜が着ているセーターの下から手を入れて、そのまま白い肌を撫でていく。白夜が頬を染め、小さく声を上げるのを、意地悪気な笑みを浮かべて見ていた。
 現実で再会したときに比べ、少しだけ健康的に肉付いた身体は柔らかく、触り心地がいい。理想の「男性」から、本来の「女性」に戻ったこともあるのだろうが、メビウスで触れたときとは全く違う感触だった。
 やがて鍵介の手が胸元に到達し、下着を上に押し上げてやると、白夜はますます恥ずかしそうに視線を逸らす。豊満な双丘は鍵介の掌で簡単に形を変え、その柔らかな感触を伝えてきた。
 「やわらかい」
 「い、いわないで、あんまり」
 思わず声に出すと、やはり恥ずかしそうにそう返ってきた。それ以上制止の言葉もないところからすると、嫌がっているというわけでもなさそうだ。恥じらう姿がまた可愛くて、もう一度軽くキスをしてから、愛撫を再開する。
 「っ、ぁ、あ……!」
 その柔らかな感触をゆっくりと味わいながら、先端の飾りも刺激していく。頭上から鼻がかった声が漏れ、鍵介の聴覚を刺激した。そのまま指の腹で労わるように撫でていると、少しずつ固さを増してその存在を主張してくる。
 更に掌を、胸から更に上へ上へと移動させていく。セーターの下に鍵介の腕が入り込み、左手が腋をかすめ、袖の部分に二人で手を通す形になりながら、腕を撫であげてその手を握る。
 「セーター、伸びるよ」
 照れ隠しなのか、白夜がそう咎める。可愛らしく無意味な抵抗に、思わずくすりと笑みが零れた。
 「誰かさんがさっき、散々引っ張って伸ばしてましたしねぇ。どうせ買い替えでしょ」
 「うう、すみません」
 申し訳なさそうに声のトーンを落としたその唇を、三度キスで塞ぐ。
 ゆっくりと。最初よりも丁寧に。今度は白夜も余裕が出て来たのか、自分から舌を絡め応えてきた。二人で舌を絡め合い、唾液を交換し合うように互いを貪る。左手は白夜の手を握って押し付けたままで、白夜もやはり抵抗しない。
 逃がしたくない。逃げたりしないのはもうわかっているのに。終わることのない独占欲に、くらくらする。愛おしくて、奪っても奪っても、足りない。
 鍵介と数日会えなかっただけで恋しがり、僅かな鍵介の名残りや香りを求めてすがり、そのまま眠ってしまうようなこの子を、愛おしく思わないなんて不可能だ。
 「っんん! っは……」
 名残惜しそうにキスを終え、そのまま再度胸元に顔を埋める。柔らかな双丘の上に色づいた飾りに舌を這わせると、やや高い嬌声が上がった。
 指の愛撫で固くなったそこを、今度は舌先で押しつぶし、愛でていく。ときおり吸い上げて強い刺激を与えると、白夜の身体が震え、更に高い悲鳴が漏れた。唇に触れる柔らかさと、耳に届く甘い声が心地いい。
 空いた手がもう片方の飾りを撫でながら、下へ下へと降りていく。綺麗に曲線を描く腰、股を撫で、下着の境界を探る。
 「あっ……ぅ……ぁ……」
 息を呑むような、悩ましい声。恥ずかしげに鍵介を見下ろす灰色の目と、視線が合った。拒絶はなく、恥じらいと、期待と、快楽に溺れかけた視線だけがこちらに向いている。思わず薄く笑みを浮かべた。
 指を下着と肌の間に滑り込ませ、取り払う。焦らすように奥へ指を滑り込ませると、そこはもうしっとりと濡れていた。
 「期待してる」
 嗜虐心が抑えられず、ついそんな意地悪を口にしてしまう。白夜は更に恥ずかしそうに目を伏せてしまった。もっと反応が見たくて、耳元に唇を寄せて囁く。
 「『先輩』。ここ、もうこんなになってる」
 「そう呼ぶの、反則……っ」
 「心外ですね。最初に反則したのは先輩ですよ」
 あんな格好で寝てるからです、とまた意地悪を言いながら、濡れたその場所に指を埋め、探りながら愛撫を始める。その場所から溢れた愛液は充分過ぎるほどで、白夜の体温と同じ温もりを持って指に絡みついてくる。まるで、奥へ奥へと誘うようだった。
 「ひ、あ、ぁ……ッ、けんすけ、それ……ぇ……だめ……っ」
 やがて探り当てた敏感な部分をくすぐると、白夜が明らかに身を震わせ、耐えがたい快楽に眉根を寄せた。
 抱え込んだ身体から感じる微かな振動が、興奮を呼ぶ。身をよじろうとしても、気持ちよさに震えても、全て鍵介には伝わってしまう。
 「ダメじゃないです。今日は眞白が悪いんだから、許さない」
 気持ちよすぎておかしくなるまで。さらにそう囁いて、探り当てた弱点を執拗に撫で続ける。強すぎないように加減をしつつ、ゆっくりと、しかし決して手を止めず。
 「う、う……っ、あ、んんっ、ぁ、っはぅ……、っひぁ、や、ほんとに、そこだめ……っ」
 か細い悲鳴は止まることなく、ずっと鍵介の耳を犯し続ける。よほど気持ちいいのか、それとも好きな男に抱かれるのが幸せなのか。白夜の身体から力がどんどん抜けて、快楽に跳ねるだけになっていく。
 「可愛い。ほら、撫でられるの好きですよね」
 「ひっ……あ、あ……ぅ、」
 ときどき甘く達してしまうのか、びくり、と身体が震える。そんなときはゆっくりと刺激を和らげ、力が抜けたのを見てから愛撫を再開した。
 もどかしそうに、白夜が鍵介を見上げる。その目から少しずつ理性が薄れ、甘えるような視線になっていくのを見るのが、たまらなく好きだった。灰色の瞳が、鍵介以外のものを認識しなくなっていく。鍵介に与えられるものに夢中になって、理性を失い、感情に溺れていく。鍵介のものになっていく。
 「けんすけ……っあ、……きもちい……」
 「そう。よかった」
 そう答えた声は、鍵介自身が思っているよりずっと優しくて、少し驚いた。
 このままずっと、白夜を甘やかしていたい。そんな風に思ってしまう。敏感な部分を撫でるだけで、思い通りに白夜は可愛らしく喘ぎ、ねだるような視線で鍵介を見上げる。その細く白い手を伸ばし、必死で鍵介に絡めようとしてくる。
 「それ、も……きもち、よすぎて、だめに、なる……」
 快楽から来る涙で瞳が潤んで、より扇情的になった表情で白夜が囁いた。
 「じゃあ、諦めてだめになってください」
 そのままダメになって、僕無しじゃいられなくなればいい。反射的にそう思って、自分も相当煽られていることを自覚し苦笑した。
 「っ、あ、あぁあ、けんすけっ、ひ……っあ」
 白夜の身体が震え、その小さな身体が強すぎる快楽に限界を迎えたのが分かった。何も寄る辺がないのは怖いのか、鍵介が繋いだ左手を白夜が握り返す。鍵介もぴったりと身体を寄り添わせてやると、少しだけ安心したように息を吐くのが分かった。
 やがて、くたり、と白夜の身体から力が抜け、浅い呼吸が耳元で聞こえ始めたあたりで、鍵介はそうっと身体を離し、汗に濡れた髪を撫でる。
 「もうちょっと頑張れる?」
 「ん……」
 尋ねると、律儀に頷くのが可愛い。褒めるように額にキスを落として、鍵介は自分の服を脱ぎ始める。それを、白夜がぼんやり眺めていた。改めて見ると、下は何もつけていないのに、上は中途半端に脱がされたセーターと下着だけ、という状態なのは本当に目に毒だった。
 「服だけより、本物の方がいいでしょ」
 自分も服を脱いでから、引き出しからゴムを一つ取り出して、パッケージを破き中身を自分自身につけていく。そうしてから、焦点の合わない目を見つめ、唇に触れるだけのキスをした。白夜は少しだけ間を置いて、ふわりと微笑む。
 「うん」
 「よろしい」
 満足そうにそう言って、今度は肌と肌で抱きしめ合う。
 そして、すっかり濡れそぼったその場所へ、張りつめた自身をあてがい、ゆっくりと腰を進める。
 白夜を傷つけないように、怖がらないように。もう何度もこんなことを繰り返してきたが、この瞬間だけは変わらず、絶対に性急には進めたくなかった。白夜にとって苦痛でしかなかったはずのこの行為が、鍵介によって、少しでも心地よく、幸福なものに変わればいいと思う。
 白夜を寝かせたままだと距離が遠くて、力の抜けた身体を抱え上げ、向かい合ってキスを繰り返す。それだけで繋がった所から、ぐちゅり、と卑猥な水音が聞こえて、ますます興奮を助長した。
 「んっ……っは……ふか……」
 殆どうわ言のような声で、白夜がうっとりと囁いた。彼女の中は暖かく、ゆっくりと鍵介自身を抱きしめていて、心地いい。そのまま腰を揺らし、自分と白夜の気持ちいい場所を探す。
 二人、その行為に夢中になるのは、時間の問題だった。
 「眞白」
 名前を呼ぶと、嬉しそうに微笑み嬌声を上げる白夜が愛おしい。
 自分の好きな人が、自分のことを好きでいてくれる、というのは本当に幸福なことだ、と鍵介は思う。
 嬉しくて、愛しくて、もっと好きになってほしくて、好きになりたくて。もう十分奥の奥で白夜を犯しているのに、まだ足りない自分は本当に欲張りだ、とも。
 けれど鍵介を欲張りにさせているのは白夜で、白夜でなければ自分はきっとここまで欲深にはなれないのだ。だったらここはお互いさまなのだろう。
 「眞白……すごい、動いてる……っあ、」
 「だって、きもちい……ぅ、んん……っ」
 切なげに締め付けてくる白夜に、鍵介もたまらず声が漏れてしまう。あまり余裕のないところを見せたくないのだが、そうも言っていられない。そもそも、好きな子を抱いているのに、余裕綽々でいろというのが無理な注文だ。
 恋も愛も理性でするものではないのだから。「好きになって」と「好きだよ」とを繰り返し、通じ合ったらちょっとしたことで抑えが効かなくなる。
 それを許し合って、限りなく長く続く「いつまでも」を目指すのがきっと正解なのだ。
 「けんすけ…………」
 「ん、なに……」
 「すき。けんすけだいすき……」
 そう言って、ぎゅう、とひときわ強く鍵介を抱きしめ、白夜は夢とうつつの中間で微笑む。その仕草は艶やかなのに、まるで何も知らない少女のように無垢で純粋で、その落差と違和感に、ついに理性が致命傷を負う。
 たまらなくなって、思わず強く腰を揺さぶった。
 「あ、あ、あ……っ、ひあ……っ」
 「っく……んっ」
 お互いに目をきつく閉じ、互いにしがみ付く。どくり、と熱いものが奥で吐き出されるのが分かり、脳裏で白く視界が染まる。びくり、と痙攣する白夜の身体を押さえつけるようにつなぎ止め、少しでも傍にいようと必死になった。
 すき、とうわ言のように繰り返す恋人が可愛くて可愛くて、おかしくなってしまいそうだ。いや、もうお互いおかしくなってしまった後か。そんなことさえもうどうでもいい。もう理性なんて置き去りにしてしまった後だ。
 
* * *

 「……おかえりなさい」
 「はい。ただいま」
 そんなやりとりをしたのは、帰宅から何時間も経った後なのはもう笑い話だ。あのあと延々と抱き合ったりそれ以上のことに及んだりして、やっと正気に戻り、二人してシャワーを浴びて。諸々終われば、もうだいぶ夜も更けてしまっていた。
 白夜のささやかな浮気相手、いわゆる鍵介のセーターはさすがに再起不能になっており、先ほど丸めてゴミ袋に捨てられてしまった。
 浮気相手とはいえ、一夜限りとは儚いものだ。
 「そんなに寂しかった?」
 「…………さみしかった、です」
 鍵介がからかい口調でそう尋ねると、白夜は少しむっとしたような顔で、しかし素直にそう答える。思わず笑いが零れて、白夜の髪を撫でて寄り添う。洗いたての黒髪は綺麗でいい香りがした。
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うわきはいけません

キーワードタグ Caligula  カリギュラ  鍵主  R18 
作品の説明 鍵介×主人公。主人公=日暮白夜(本名・日暮眞白)。
自宅主人公設定注意、現実世界で女性の設定です。
詳しくはこちら→http://5w1h.minibird.jp/2016/10/04/caligula-byakuya/
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うわきはいけません
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 恋も愛も理性でするものではないのだから、理性がとんだら止まらないのは道理である。

 泊まりがけの用事が出来た。珍しいことではないが、こういう事情で家を空けることはたまにある。
 「気を付けて」
 そんなことがあるたび、白夜はやや心配そうに、けれど気丈に振る舞いながら、鍵介笑って見送ってくれる。その本心は「ついていきたい」なのか「寂しい」なのか。聞いてしまうと離れがたいので、いつも聞けずにいる。
 「わかってる。そっちも、火の元とか気を付けて。……じゃあ、いってきます」
 「うん。いってらっしゃい」
 後ろ髪を引かれるような思いをしながら肩越しに見た白夜は、こらえてはいるのだろうがやはり寂しげで、少しだけ胸が痛んだ。
 中学、高校と軟禁生活を送っていた影響で、白夜は交友関係が異常に狭い。もちろん、家を出て一人暮らしをはじめ、こうやって鍵介と暮らしてからは、少しずつそれも改善しようとしてはいる。
 しかし、交友関係なんて一朝一夕に広がるものでもない。結果、こうやって鍵介だけが外出する用事が出来る、ということも起こってしまうのだった。
 白夜は、「鍵介が悪いわけじゃないでしょ」と気にしていない素振りだが、やはり寂しいのだろう、とは思う。何か埋め合わせしよう、といつも思うのが常だった。

 そして、今回の用事を終えてようやく帰ってきた。
 「ただいま」
 一日ぶりの家の中はしんとしていて、その声にも反応は帰って来ない。出かけたのかとも思ったが、玄関の鍵は開いていた。
 「眞白?」
 不安半分、不思議半分で家に入ると、寝室のドアが開いている。そのままドアを開けて中に入ると、布団にはちょうど一人分くらいの膨らみがあった。そして、よく見ると規則正しく上下している。
 ……どうやら、鍵介の帰りを待っている最中に眠ってしまったらしい。一瞬、また親類から嫌がらせを受けたり、何かに巻き込まれたりしたのでは、とひやりとしたが、ほっと胸をなでおろす。
 しかしもう時刻は夕方だ。夕飯の支度もあるし、起こそうと思い布団をめくってみた。
 すると、そこには衝撃的な光景が広がっていたのである。
 「…………………!」
 鍵介と白夜、二人分の布団をぴったりと合わせたそのど真ん中に、白夜は幸せそうな寝顔で眠っていた。下着姿に、鍵介の白いセーターだけを着て。
 「……なんだこれ……」
 思わず声に出してしまった。自問したところで答えなどわかるはずもないのだが。
 白いセーターから覗く真っ白な手足と、布団の温もりにうっすらピンクに色づいた肌が、なんともあだめいていて。何度見ても、たぶん下着しかつけていない。
 鍵介は男性にしては小柄な方だが、眞白は女性の中でも更に小柄なので、ぎりぎり危ういところが見えていない状態だ。そんな姿で、子供のようにきゅっと身を縮めて寝息を立てている。
 「…………? ん…………」
 さすがに布団をはがされっぱなしで寒かったのか、それとも鍵介の声に起こされたのか、白夜が小さく声を上げて目を開いた。
 「けんすけ……?」
 白夜の寝ぼけ眼がゆっくりと焦点を合わせ、鍵介を捉える。そして辺りを見渡し、しばらくそのままだった。今、まだ寝起きの頭で自分の状況を思い出しているのだろう。
 「…………! えっ、あ、あの! ち、違う! これは違う! 」
 そして一気に覚醒したらしく、顔を真っ赤にしてセーターを押さえ始めた。ぐいぐいと下に向かって伸ばされていくセーターを見つめながら「ああ、あれ気に入ってたけど買い替えかなあ」なんて考えている鍵介は、まだ現実が遠い。
 というか、何が「違う」のだろう。その反応はまるで浮気が見つかったみたいじゃないか。僕は誰と浮気されたんだろう。自分のセーターか?
 「何が違うんですか『先輩』」
 そんな現実逃避をしている間に少しずつ面白くなってきて、自然とからかうために昔の口調に戻った。白夜はそんなことも気付かないほど慌てふためいている。
 「ええと、だから、その、これは……あの、ごめんなさい」
 言い訳を探したのだろうが、結局思いつかなかったらしい。俯いて素直に謝った。
 それがなんだか可愛くて、思わず吹き出してしまう。許してやりたいが、ちょっと意地悪してしまいたくなる気持ちもある。布団に座り込んだ白夜に視線を合わせるように、鍵介も荷物を置いて布団に座った。
 「いきなりごめんなさい、じゃわかんないですよ。ちゃんと説明してくれます? 何がどうしてこうなったのか」
 「そ、の……その、さ、寂しくて……つい、その……」
 「なるほど。先輩は寂しいから、僕のセーターを勝手に着て、そんな恰好で寝てたと」
 繰り返してやると、白夜は本当に絵に描いたように真っ赤になって更に俯いてしまった。小さくもう一度「ごめんなさい」と繰り返したのが聴こえる。
 「そうですね、浮気はいけません」
 「う、うわき……? えっ」
 鍵介がそういうと、「浮気」の文字に思考停止したのか、白夜は真っ赤なまま目を丸くした。その隙に肩を押してやると、面白いくらい簡単に押し倒せてしまう。とさり、と軽い音を立て小柄な身体が布団に倒れ、黒髪が広がった。
 上から見下ろすと改めて思うが、扇情的な光景だ。自分の下着姿に自分のセーターを着ただけの恋人が押し倒されている、というのは。
 「とにかく。今回は先輩が悪いんですからね。そこんとこ覚えておいてください」
 いいですね、と念押ししてから眼鏡を外し、その桜色に色づいた肌と唇を味わい始めた。
 体重をかけ過ぎないように気を付けながら、口付けを落とし、少しずつ角度を変えて口内を犯す。柔らかな唇に吸い付き、舌を割り入れて、敏感な部分をそうっと刺激していった。上顎、舌裏、舌先にゆっくりと優しい愛撫を繰り返す。
 「ん、ぅ……」
 ときどき、「ちゅ」と音を立ててみせると、気持ちよさそうに声を漏らし、眉を寄せるのが可愛らしい。
 白夜の華奢な身体はすっぽりと鍵介の身体の内側に入っていて、逃げようにも逃げられない。そもそも、白夜は逃げようとなどしないのだが。その事実が、鍵介の中の独占欲と嗜虐心を、やわやわと刺激する。この子は自分のもので、自分がこんなことをしても、喜んで受け入れるくらい自分に溺れているのだ、という実感がたまらない。
 白夜が着ているセーターの下から手を入れて、そのまま白い肌を撫でていく。白夜が頬を染め、小さく声を上げるのを、意地悪気な笑みを浮かべて見ていた。
 現実で再会したときに比べ、少しだけ健康的に肉付いた身体は柔らかく、触り心地がいい。理想の「男性」から、本来の「女性」に戻ったこともあるのだろうが、メビウスで触れたときとは全く違う感触だった。
 やがて鍵介の手が胸元に到達し、下着を上に押し上げてやると、白夜はますます恥ずかしそうに視線を逸らす。豊満な双丘は鍵介の掌で簡単に形を変え、その柔らかな感触を伝えてきた。
 「やわらかい」
 「い、いわないで、あんまり」
 思わず声に出すと、やはり恥ずかしそうにそう返ってきた。それ以上制止の言葉もないところからすると、嫌がっているというわけでもなさそうだ。恥じらう姿がまた可愛くて、もう一度軽くキスをしてから、愛撫を再開する。
 「っ、ぁ、あ……!」
 その柔らかな感触をゆっくりと味わいながら、先端の飾りも刺激していく。頭上から鼻がかった声が漏れ、鍵介の聴覚を刺激した。そのまま指の腹で労わるように撫でていると、少しずつ固さを増してその存在を主張してくる。
 更に掌を、胸から更に上へ上へと移動させていく。セーターの下に鍵介の腕が入り込み、左手が腋をかすめ、袖の部分に二人で手を通す形になりながら、腕を撫であげてその手を握る。
 「セーター、伸びるよ」
 照れ隠しなのか、白夜がそう咎める。可愛らしく無意味な抵抗に、思わずくすりと笑みが零れた。
 「誰かさんがさっき、散々引っ張って伸ばしてましたしねぇ。どうせ買い替えでしょ」
 「うう、すみません」
 申し訳なさそうに声のトーンを落としたその唇を、三度キスで塞ぐ。
 ゆっくりと。最初よりも丁寧に。今度は白夜も余裕が出て来たのか、自分から舌を絡め応えてきた。二人で舌を絡め合い、唾液を交換し合うように互いを貪る。左手は白夜の手を握って押し付けたままで、白夜もやはり抵抗しない。
 逃がしたくない。逃げたりしないのはもうわかっているのに。終わることのない独占欲に、くらくらする。愛おしくて、奪っても奪っても、足りない。
 鍵介と数日会えなかっただけで恋しがり、僅かな鍵介の名残りや香りを求めてすがり、そのまま眠ってしまうようなこの子を、愛おしく思わないなんて不可能だ。
 「っんん! っは……」
 名残惜しそうにキスを終え、そのまま再度胸元に顔を埋める。柔らかな双丘の上に色づいた飾りに舌を這わせると、やや高い嬌声が上がった。
 指の愛撫で固くなったそこを、今度は舌先で押しつぶし、愛でていく。ときおり吸い上げて強い刺激を与えると、白夜の身体が震え、更に高い悲鳴が漏れた。唇に触れる柔らかさと、耳に届く甘い声が心地いい。
 空いた手がもう片方の飾りを撫でながら、下へ下へと降りていく。綺麗に曲線を描く腰、股を撫で、下着の境界を探る。
 「あっ……ぅ……ぁ……」
 息を呑むような、悩ましい声。恥ずかしげに鍵介を見下ろす灰色の目と、視線が合った。拒絶はなく、恥じらいと、期待と、快楽に溺れかけた視線だけがこちらに向いている。思わず薄く笑みを浮かべた。
 指を下着と肌の間に滑り込ませ、取り払う。焦らすように奥へ指を滑り込ませると、そこはもうしっとりと濡れていた。
 「期待してる」
 嗜虐心が抑えられず、ついそんな意地悪を口にしてしまう。白夜は更に恥ずかしそうに目を伏せてしまった。もっと反応が見たくて、耳元に唇を寄せて囁く。
 「『先輩』。ここ、もうこんなになってる」
 「そう呼ぶの、反則……っ」
 「心外ですね。最初に反則したのは先輩ですよ」
 あんな格好で寝てるからです、とまた意地悪を言いながら、濡れたその場所に指を埋め、探りながら愛撫を始める。その場所から溢れた愛液は充分過ぎるほどで、白夜の体温と同じ温もりを持って指に絡みついてくる。まるで、奥へ奥へと誘うようだった。
 「ひ、あ、ぁ……ッ、けんすけ、それ……ぇ……だめ……っ」
 やがて探り当てた敏感な部分をくすぐると、白夜が明らかに身を震わせ、耐えがたい快楽に眉根を寄せた。
 抱え込んだ身体から感じる微かな振動が、興奮を呼ぶ。身をよじろうとしても、気持ちよさに震えても、全て鍵介には伝わってしまう。
 「ダメじゃないです。今日は眞白が悪いんだから、許さない」
 気持ちよすぎておかしくなるまで。さらにそう囁いて、探り当てた弱点を執拗に撫で続ける。強すぎないように加減をしつつ、ゆっくりと、しかし決して手を止めず。
 「う、う……っ、あ、んんっ、ぁ、っはぅ……、っひぁ、や、ほんとに、そこだめ……っ」
 か細い悲鳴は止まることなく、ずっと鍵介の耳を犯し続ける。よほど気持ちいいのか、それとも好きな男に抱かれるのが幸せなのか。白夜の身体から力がどんどん抜けて、快楽に跳ねるだけになっていく。
 「可愛い。ほら、撫でられるの好きですよね」
 「ひっ……あ、あ……ぅ、」
 ときどき甘く達してしまうのか、びくり、と身体が震える。そんなときはゆっくりと刺激を和らげ、力が抜けたのを見てから愛撫を再開した。
 もどかしそうに、白夜が鍵介を見上げる。その目から少しずつ理性が薄れ、甘えるような視線になっていくのを見るのが、たまらなく好きだった。灰色の瞳が、鍵介以外のものを認識しなくなっていく。鍵介に与えられるものに夢中になって、理性を失い、感情に溺れていく。鍵介のものになっていく。
 「けんすけ……っあ、……きもちい……」
 「そう。よかった」
 そう答えた声は、鍵介自身が思っているよりずっと優しくて、少し驚いた。
 このままずっと、白夜を甘やかしていたい。そんな風に思ってしまう。敏感な部分を撫でるだけで、思い通りに白夜は可愛らしく喘ぎ、ねだるような視線で鍵介を見上げる。その細く白い手を伸ばし、必死で鍵介に絡めようとしてくる。
 「それ、も……きもち、よすぎて、だめに、なる……」
 快楽から来る涙で瞳が潤んで、より扇情的になった表情で白夜が囁いた。
 「じゃあ、諦めてだめになってください」
 そのままダメになって、僕無しじゃいられなくなればいい。反射的にそう思って、自分も相当煽られていることを自覚し苦笑した。
 「っ、あ、あぁあ、けんすけっ、ひ……っあ」
 白夜の身体が震え、その小さな身体が強すぎる快楽に限界を迎えたのが分かった。何も寄る辺がないのは怖いのか、鍵介が繋いだ左手を白夜が握り返す。鍵介もぴったりと身体を寄り添わせてやると、少しだけ安心したように息を吐くのが分かった。
 やがて、くたり、と白夜の身体から力が抜け、浅い呼吸が耳元で聞こえ始めたあたりで、鍵介はそうっと身体を離し、汗に濡れた髪を撫でる。
 「もうちょっと頑張れる?」
 「ん……」
 尋ねると、律儀に頷くのが可愛い。褒めるように額にキスを落として、鍵介は自分の服を脱ぎ始める。それを、白夜がぼんやり眺めていた。改めて見ると、下は何もつけていないのに、上は中途半端に脱がされたセーターと下着だけ、という状態なのは本当に目に毒だった。
 「服だけより、本物の方がいいでしょ」
 自分も服を脱いでから、引き出しからゴムを一つ取り出して、パッケージを破き中身を自分自身につけていく。そうしてから、焦点の合わない目を見つめ、唇に触れるだけのキスをした。白夜は少しだけ間を置いて、ふわりと微笑む。
 「うん」
 「よろしい」
 満足そうにそう言って、今度は肌と肌で抱きしめ合う。
 そして、すっかり濡れそぼったその場所へ、張りつめた自身をあてがい、ゆっくりと腰を進める。
 白夜を傷つけないように、怖がらないように。もう何度もこんなことを繰り返してきたが、この瞬間だけは変わらず、絶対に性急には進めたくなかった。白夜にとって苦痛でしかなかったはずのこの行為が、鍵介によって、少しでも心地よく、幸福なものに変わればいいと思う。
 白夜を寝かせたままだと距離が遠くて、力の抜けた身体を抱え上げ、向かい合ってキスを繰り返す。それだけで繋がった所から、ぐちゅり、と卑猥な水音が聞こえて、ますます興奮を助長した。
 「んっ……っは……ふか……」
 殆どうわ言のような声で、白夜がうっとりと囁いた。彼女の中は暖かく、ゆっくりと鍵介自身を抱きしめていて、心地いい。そのまま腰を揺らし、自分と白夜の気持ちいい場所を探す。
 二人、その行為に夢中になるのは、時間の問題だった。
 「眞白」
 名前を呼ぶと、嬉しそうに微笑み嬌声を上げる白夜が愛おしい。
 自分の好きな人が、自分のことを好きでいてくれる、というのは本当に幸福なことだ、と鍵介は思う。
 嬉しくて、愛しくて、もっと好きになってほしくて、好きになりたくて。もう十分奥の奥で白夜を犯しているのに、まだ足りない自分は本当に欲張りだ、とも。
 けれど鍵介を欲張りにさせているのは白夜で、白夜でなければ自分はきっとここまで欲深にはなれないのだ。だったらここはお互いさまなのだろう。
 「眞白……すごい、動いてる……っあ、」
 「だって、きもちい……ぅ、んん……っ」
 切なげに締め付けてくる白夜に、鍵介もたまらず声が漏れてしまう。あまり余裕のないところを見せたくないのだが、そうも言っていられない。そもそも、好きな子を抱いているのに、余裕綽々でいろというのが無理な注文だ。
 恋も愛も理性でするものではないのだから。「好きになって」と「好きだよ」とを繰り返し、通じ合ったらちょっとしたことで抑えが効かなくなる。
 それを許し合って、限りなく長く続く「いつまでも」を目指すのがきっと正解なのだ。
 「けんすけ…………」
 「ん、なに……」
 「すき。けんすけだいすき……」
 そう言って、ぎゅう、とひときわ強く鍵介を抱きしめ、白夜は夢とうつつの中間で微笑む。その仕草は艶やかなのに、まるで何も知らない少女のように無垢で純粋で、その落差と違和感に、ついに理性が致命傷を負う。
 たまらなくなって、思わず強く腰を揺さぶった。
 「あ、あ、あ……っ、ひあ……っ」
 「っく……んっ」
 お互いに目をきつく閉じ、互いにしがみ付く。どくり、と熱いものが奥で吐き出されるのが分かり、脳裏で白く視界が染まる。びくり、と痙攣する白夜の身体を押さえつけるようにつなぎ止め、少しでも傍にいようと必死になった。
 すき、とうわ言のように繰り返す恋人が可愛くて可愛くて、おかしくなってしまいそうだ。いや、もうお互いおかしくなってしまった後か。そんなことさえもうどうでもいい。もう理性なんて置き去りにしてしまった後だ。
 
* * *

 「……おかえりなさい」
 「はい。ただいま」
 そんなやりとりをしたのは、帰宅から何時間も経った後なのはもう笑い話だ。あのあと延々と抱き合ったりそれ以上のことに及んだりして、やっと正気に戻り、二人してシャワーを浴びて。諸々終われば、もうだいぶ夜も更けてしまっていた。
 白夜のささやかな浮気相手、いわゆる鍵介のセーターはさすがに再起不能になっており、先ほど丸めてゴミ袋に捨てられてしまった。
 浮気相手とはいえ、一夜限りとは儚いものだ。
 「そんなに寂しかった?」
 「…………さみしかった、です」
 鍵介がからかい口調でそう尋ねると、白夜は少しむっとしたような顔で、しかし素直にそう答える。思わず笑いが零れて、白夜の髪を撫でて寄り添う。洗いたての黒髪は綺麗でいい香りがした。
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